Bibiちゃん賛歌


 私が個人サイトを立ち上げた大きなきっかけは、松島 智氏によって開発されたオープンソースのepubビュアー・「Bibi」に出会ったことである。

 Bibiの大きな特徴は、読者がビュアーやファイルをダウンロードすることなく、ブラウザ上でepub形式の電子書籍を閲覧できる点にある。読者はWebページを訪問するだけで電子書籍を楽しむことができるし、作者は外部のプラットフォームに頼らずに自分の思い通りの作品を届けることができる。個人で創作活動をしている作者の強い味方だ。

 私の場合、小説を公開するにあたって「縦書き・明朝体」というフォーマットに強いこだわりがあった。幼少期より紙媒体の文芸作品を読み漁ってきた私にとっては、それこそが小説を最も楽しめるスタイルなのである。このこだわりは最早、呪縛と言っていいレベルで私にまとわりついている。

 ところが、私の愛する「縦書き・明朝体」スタイルはWebコンテンツとすこぶる相性が悪い。このサイトがそうであるように、Webに存在するほぼすべての閲覧物は横書きである。字体においても、手元でじっくり読む印刷物では明朝体が主流だが、モニター越しに読むWebコンテンツではゴチック体のほうが視認性に優れており、採用されることが多い。
 小説を公開する上でこれら2点を押し通そうとすると、利用可能な小説投稿サイトはかなり限られる。その上、「縦書き・明朝体」を設定できるプラットフォームであったとしても、その表示のされ方は紙媒体の書籍とは大きく異なってしまう。

 つまり、私は紙媒体の書籍になるべく近い形態で、小説を公開したいのである。
 この願望を叶える最も直接的な方法は同人誌を発行することだ。実際、私は自身の作品を書籍のかたちで発行したことがある。しかし、「モノ」を作るには費用がかかる。費用がかかるものを無料でひろく楽しんでいただくことは難しい。頒布方法の問題もある。手軽に読んでもらうためにはやはり、Web上に公開したい。しかし、フォーマットの妥協はしたくない。実に我儘な願望であろう。

 そんな私がBibiに出会ったときの喜びがいかほどであったか、おわかりいただけるだろうか。紙媒体に近いフォーマットの電子書籍を、Webサイトのように気軽に読んでもらえる。私の願いをすべて叶える、魔法のランプのようなツールである。Bibiを設置すれば自分の思い通りの作品を公開できる、という喜びが、私の個人サイト開設を大きく後押しした。Bibiがオープンソース・フリーツールであることも、大変ありがたかった。

 この記事は、私からBibiと松島氏への、感謝を込めたラブレターである。Bibiは既にいくつかの賞を受賞しており、松島氏が電子書籍の普及・発展に寄与した功績は、私が語らずとも自明である。しかし当サイトを構築するにあたり、自己満足であるとしても、どうしてもこのページを作らずにはいられなかったのである。
 これからもBibiが末永く、多くのひとびとに愛されることを願って、末筆とする。

【外部リンク】

投稿日

最終更新日