仕事で遠くまで来た。
ちょっと食糧事情がよろしくない地域であることが事前に分かっていたので、かしこい私はインスタント食品の類いを装備して旅に臨んだ。
ホテルに到着したのが午後10時30分。周囲の飲食店もスーパーも、既に閉まっている。腹が減っている。旅の序盤で既にチキンラーメンの出番だ。
私はスーツケースを開け、チキンラーメンの袋を取り出した。
ポットに水を入れ、沸かしはじめたところで、はた、と思い至る。
……どんぶりは? 蓋は? 箸は??
弁明をさせて頂こう。このとき私は、仕事場への経由地のホテルにいた。仕事中に滞在する場所は、キッチンや什器が備え付けであることを知っていたので、スーツケースの容量を節約するためにチキンラーメンだけを持ってきていたのである。
……仕方がない。ありもので食べるしかない。
そうして私が編み出したのが、以下の方法である。

まずはチキンラーメンをマグカップに入る大きさにする。このカップは当然、ホテルのものである。
ホテルの湯沸かし器で用意した熱湯を、マグカップに注ぐ。ティッシュとかカロリーメイトの箱とか、あるもので蓋をする。3分待つ。
ラーメンができたら喫食しよう。
まずはスープを楽しむ。箸がない、フォークもない、スプーンもナイフもないのだから仕方がない。カップヌードルであれば、蓋を折り畳んで箸代わりにするという技が使えたのだが、これはチキンラーメンだ。ビニルの袋は頼りない。
スープを飲み終え、麺だけがマグカップに残ったら、もしゃもしゃと麺を頑張って啜る。
こんなんになってもチキンラーメンはおいしい。
次の出張のときは、割り箸一膳くらい持って行こう……と思ったところで、喉元過ぎればなのはわかりきっている。私は今回の出張で既に、みっつは忘れ物をしているのだ。
仕事で使う大切なものは持ってきているのだが、生活のための細々としたものをゴキゲンに忘れまくっている。
最低限を保つのに精一杯な駄目人間、それが私だ。
焼きそばみたいになったチキンラーメンを啜りながら、出張一日目の夜は更ける。

